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成長期に必要な栄養と食習慣:「身長を伸ばす食事」のポイント

2026.02.26

「子どもの身長を少しでも伸ばしてあげたい」――これは、多くの保護者が抱く切実な願いです。身長には遺伝的要因が大きく関与しますが、遺伝がすべてではありません。その子が持つ遺伝的な可能性を最大限に引き出すためには、「栄養」「睡眠」「運動」といった環境要因が極めて重要です。特に「栄養」は、身体を作る材料そのものであり、成長の土台となります。
しかし、インターネット上には「これを食べれば背が伸びる」といった断片的な情報が溢れており、中には科学的根拠が乏しいものも見受けられます。大切な成長期において、正しい知識に基づいた食生活を実践することが不可欠です。
本稿では、小児内分泌学(成長とホルモンの専門分野)と栄養学の知見に基づき、身長が伸びるメカニズムを踏まえた上で、成長期に本当に必要な栄養素と効果的な食習慣について、科学的根拠(エビデンス)に基づき詳しく解説します。

身長が伸びるメカニズムと栄養の役割

身長が伸びるとは、すなわち「骨が伸びる」ことです。子どもの骨の端にある「骨端線(成長板)」と呼ばれる軟骨部分が成長することで、身長は伸びていきます。このプロセスは、脳から分泌される「成長ホルモン」と、それによって主に肝臓で作られる「IGF-1(インスリン様成長因子-1)」によって制御されています。

栄養素は、このプロセスにおいて多岐にわたる役割を担います。

  • 材料となる : 骨や筋肉、ホルモンそのものを作る材料。
  • エネルギー源となる: 細胞が増殖し、身体が成長するためのエネルギー。
  • 調整役となる: 材料を効率よく利用し、ホルモンの働きや代謝をサポートする調整役。

骨の構造と「カルシウム神話」

「身長=カルシウム(牛乳)」というイメージが強いですが、これは十分ではありません。
骨の構造を鉄筋コンクリートの建物に例えると、理解しやすくなります。

  • 鉄筋 = タンパク質(主にコラーゲン)
  • コンクリート = カルシウム、リンなどのミネラル

まず、タンパク質で骨の土台(骨基質)が作られます。これが「鉄筋」であり、骨のしなやかさを担います。そして、その骨組みにカルシウムなどが付着することで、硬さと強度(コンクリート)が生まれます。

鉄筋が脆弱では、いくらコンクリートを流し込んでも丈夫な建物は完成しません。成長期においては、カルシウムと同様、あるいはそれ以上に「タンパク質」の重要性を認識する必要があります。

成長期に不可欠な主要栄養素

身長を伸ばすためには、多様な栄養素が連携して働く必要があります。ここでは、特に重要な栄養素について解説します。

タンパク質:すべての基本材料

最も重要かつ基本的な栄養素です。骨の土台、筋肉、そして成長ホルモンやIGF-1の材料となります。タンパク質が不足すると、IGF-1の産生が低下し、成長速度が鈍化することが知られています。

  • 必要量 : 成長期の子どもは、体重あたりで成人の約1.2~1.5倍ものタンパク質を必要とします(体重1kgあたり約1.2~1.5gが目安)。
  • 摂取のポイント: 体内で合成できない必須アミノ酸をバランス良く含む、「アミノ酸スコア」の高い良質なタンパク質(肉類、魚介類、卵、乳製品、大豆製品)を毎食取り入れることが重要です。動物性と植物性を組み合わせ、多様な食品から摂取しましょう。

カルシウム:骨を硬く丈夫に

骨の硬さを担う主要なミネラルです。成長期は生涯で最も骨量が増加する時期(PeakBone Massの獲得期)であり、この時期のカルシウム摂取量は将来の骨の健康にも影響します。

  • 現状と課題: 日本人の食生活では不足しがちな栄養素の一つです。「日本人の食事摂取基準」では、成長スパート期(12~14歳)の男子で1日1000mgが推奨されていますが、多くの子どもがこれを満たしていません(1)。
  • 摂取のポイント: 吸収率の良い乳製品に加え、小魚、大豆製品、緑黄色野菜(小松菜など)を積極的に取り入れましょう。

ビタミンD:カルシウムの「運び屋」

カルシウムを効率よく利用するためにはビタミンDが不可欠です。ビタミンDは腸管からのカルシウム吸収を促進し、骨への沈着を助けます。

  • 摂取のポイント: 魚介類(サケ、イワシなど)やきのこ類に多く含まれます。また、皮膚が紫外線を浴びることで体内でも生成されます。近年、屋外活動の減少などにより、子どもでもビタミンD不足が増加しているため、適度な日光浴も重要です。

マグネシウム:骨の調整役とエネルギー代謝

カルシウムとともに骨の健康維持に働き、骨の弾力性を維持する役割があります。また、体内の多くの酵素反応(エネルギー代謝)を助けます。カルシウムとマグネシウムは「2:1」のバランスで摂取することが理想とされています。

  • 摂取のポイント: 未精製の穀類(玄米など)、ナッツ類、海藻類、大豆製品に豊富です。

亜鉛:成長のアクセル

タンパク質の合成や細胞分裂に必須であり、骨端線での軟骨細胞の増殖に関与します。また、IGF-1の活性化にも必要です。亜鉛の欠乏は成長障害の原因となります(2)。

  • 摂取のポイント: 牡蠣、赤身肉、レバー、卵黄などに多く含まれます。加工食品に偏ると不足しやすいため注意が必要です。

その他の重要な栄養素

  • 鉄 : 全身に酸素を運び、エネルギー代謝に関わります。不足すると食欲不振や疲労感から成長に悪影響を及ぼします。特に思春期やスポーツを行う子どもでは需要が増大します。
  • ビタミンK: カルシウムが骨に沈着するのを助ける働きがあります。納豆や緑黄色野菜に多く含まれます。

身長の伸びを妨げる可能性のある食習慣

栄養を「摂る」ことだけでなく、「避けたい習慣」を理解することも重要です。

エネルギー不足と過度なダイエット

最も避けたいのは慢性的なエネルギー不足です。摂取エネルギーが不足すると、体は生命維持を優先し、成長を後回しにするため、身長の伸びが抑制されます。特に思春期における過度なダイエットは、非常に危険です。

糖質の過剰摂取(特に清涼飲料水・お菓子)

糖質の摂りすぎは、いくつかの側面から成長に悪影響を及ぼす可能性があります。

  • 成長ホルモン分泌への影響 : 食後に血糖値が急上昇すると、血糖値を下げるためにインスリンが分泌されます。高血糖状態(インスリンが出ている状態)では、成長ホルモンの分泌が抑制されることが知られています。
  • 栄養バランスの乱れ : 糖質でお腹が満たされ、他の重要な栄養素が不足しやすくなります。
  • 肥満と思春期への影響 : 過度な肥満は思春期を早める(思春期早発傾向)要因となり得ます。思春期が早く来ると、一時的に身長が伸びても、骨の成熟が早まるため、結果的に成人身長が低くなる可能性があります。

加工食品の多用(リン酸塩の過剰摂取)

インスタント食品、スナック菓子、一部の加工肉などには、食品添加物として「リン酸塩」が多く含まれていることがあります。リンを過剰に摂取すると、カルシウムの吸収を阻害し、骨の健康に悪影響を及ぼす可能性があります

実践的な食習慣の提案

では、日々の食生活にどのように取り入れればよいでしょうか。

バランスの基本:「主食・主菜・副菜」を揃える

特定の食材に頼るのではなく、多様な食品を組み合わせることが最も重要です。「主食(炭水化物)」「主菜(タンパク質)」「副菜(ビタミン・ミネラル)」を揃える定食スタイルを基本としましょう。
和食の「まごわやさしい」(豆、ごま、わかめ、野菜、魚、しいたけ、いも)は、成長期に必要な栄養素をバランスよく摂取するための良い指標となります。

食事のタイミングと規則性

朝食を抜かない : 朝食は、生活リズムを整え、成長ホルモンの働きを十分に発揮させるためにも重要です。しっかりとエネルギーとタンパク質を補給しましょう。

夜食を避ける : 成長ホルモンは睡眠中に多く分泌されます。就寝直前に食事を摂ると、睡眠の質が低下したり、血糖値が高い状態となって成長ホルモンの分泌が妨げられたりする可能性があります。夕食は就寝の2~3時間前までに済ませるのが理想的です。

補食(おやつ)は「第4の食事」

活動量が多い成長期には、補食(おやつ)が重要です。スナック菓子や甘い飲み物で済ませず、おにぎり、乳製品(ヨーグルト、チーズ)、果物、ナッツ類など、タンパク質やカルシウムを補給できるものを選びましょう。

おわりに

身長の伸びは、日々の食事、そして睡眠と運動の積み重ねの結果です。即効性を求めるのではなく、長期的な視点で、バランスの取れた生活習慣を継続することが、その子が持つ成長の可能性を最大限に引き出す鍵となります。

同時に、お子様の成長を客観的に評価するために「成長曲線」を作成しましょう。もし、食生活に気をつけていても身長の伸びが著しく遅い場合は、栄養以外の要因が隠れている可能性も否定できません。そのような場合は、食事だけで解決しようとせず、早めに小児内分泌専門医にご相談ください。当院では、栄養指導と合わせて、医学的な観点からもお子様の成長をサポートいたします。

【出典・参考文献】
(1) 厚生労働省. 令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要. / 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版).
(2) Brown KH, et al. Effect of supplemental zinc on the growth and serum zinc concentrations of prepubertal children: a meta-analysis of randomized controlled trials. Am J Clin Nutr. 2002;75(6):1062-1071.

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