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お子さまの身長、平均ってどのくらい? 成長スピードと平均値を分かりやすく解説

2026.02.26

「クラスで並んだとき、うちの子はどの位置だろう?」「この1年であまり伸びていない気がするけれど、大丈夫だろうか?」――。子どもの成長過程において、身長は最も目に見えやすい指標の一つです。それゆえに、保護者の皆様が周囲の子どもや「平均身長」と比較し、不安や疑問を感じることは少なくありません。

しかし、子どもの成長パターンは実に多様です。早く身長が伸びる子もいれば、ゆっくりと着実に伸びる子もいます。単に「平均値」と比較するだけでは、その子の成長が本当に順調なのか、あるいは何らかのサインが出ているのかを正しく評価することはできません。

本稿では、小児内分泌学(成長とホルモンに関する専門分野)の視点から、最新の統計データに基づく平均身長を紹介するとともに、成長の基本的なパターン(成長スピード)と、医学的な身長評価の方法について、科学的根拠に基づき詳しく解説します。平均値という数字に惑わされず、お子様の成長を客観的に評価する方法を理解するための一助となれば幸いです。

日本の子どもの「平均身長」とデータの正しい見方

まず、私たちが目にする「平均身長」とはどのようなデータで、どう解釈すべきなのでしょうか。

年齢別平均身長データ

「日本における子どもの身長データは、主に文部科学省が毎年実施している「学校保健統計調査」などに基づいています。以下に、近年の調査(1)に基づく、代表的な年齢の平均身長を示します。

年齢 男子 平均身長 (cm) 女子 平均身長 (cm)
5歳(幼稚園) 110.6 109.3
6歳(小1) 116.8 115.7
8歳(小3) 128.5 127.5
10歳(小5) 139.8 140.2
12歳(中1) 152.7 151.9
14歳(中3) 165.5 156.7
17歳(高3) 170.8 157.9

(参考:令和4年度 学校保健統計調査より)

このデータを見ると、小学校高学年頃に一時的に女子の平均身長が男子を上回ることがあります。これは、後述する思春期の成長スパートを女子の方が早く迎えるためですが、最終的な平均身長は男子の方が高くなります。

「平均」の落とし穴と医学的な評価基準:SDスコア

重要なのは、平均値はあくまで「集団の中央の値」であり、絶対的な「正常値」や「目標値」ではないということです。身長は、平均値を中心に山のような形(正規分布)でばらついています。平均値から離れていること自体が、直ちに異常を意味するわけではありません。

この「ばらつき」を客観的に評価するために、医学の世界では「SDスコア(StandardDeviation Score: 標準偏差スコア)」という指標を用います。SDスコアは、「同性・同年齢の平均身長から、どれくらい離れているか」を示す数値です。

【SDスコアの解釈】

0 SD : ちょうど平均身長。

+2.0 SD 〜 -2.0 SD : この範囲内であれば、医学的には「標準範囲」とされます。全体の約95.4%の子どもがこの範囲に入ります。

つまり、「平均」だけが正常なのではなく、標準範囲には大きな幅があるのです。

そして、身長が-2.0 SD以下の場合を、医学的な「低身長」と定義しています。これは、同性・同年齢の子ども100人を身長順に並べたとき、前から約2〜3番目までに入る身長(全体の約2.3%)であることを意味します。身長が-2.0SD以下の場合は、背景に何らかの要因がないかを確認するために、専門医による評価が推奨されます。

成長のパターン:身長はいつ、どれくらい伸びるのか?

子どもの身長は、一定の速度で伸び続けるわけではありません。成長の過程は、成長速度が劇的に変化する特徴的な3つのフェーズに分けられます。

フェーズ1:乳幼児期(第一次成長期)― 最も急速な伸び

人生で最も成長速度が速い時期です。出生から1歳までに約25cmも伸び、4歳頃まで急速な成長が続きます。この時期の成長には、主に「栄養状態」が強く影響します。

フェーズ2:学童期(思春期前)― 安定した成長期

4歳頃から思春期が始まる前までの期間は、成長速度は緩やかになりますが、安定したペースで伸び続けます。この時期の成長を支える主役は「成長ホルモン」です。

  • 標準的な伸び: 年間約5~6cm

この時期に、年間成長速度が4cm未満の状態が続く場合は、何らかの原因が隠れている可能性があるため、注意が必要です。

フェーズ3:思春期(第二次成長期)― 成長スパート

学童期後半から、再び急激に身長が伸びる「成長スパート」が訪れます。これは、「性ホルモン」の分泌が活発になることによって引き起こされます。

  • 男子 : 一般的に11~13歳頃にスパートが始まり、ピーク時には年間約9~10cm、あるいはそれ以上伸びます。
  • 女子 : 男子より約2年早く、9~11歳頃にスパートが始まります。ピーク時の年間成長速度 は約7~8cmです。

性ホルモンは身長を大きく伸ばしますが、同時に骨を成熟させ、成長の終わり(骨端線の閉鎖)を促す役割も果たします。スパート後半になると成長速度は急激に低下し、やがて身長の伸びは停止します。

「平均身長」よりも重要な「成長速度」

お子様の成長を評価する上で、「現在の身長が平均と比べてどうか」よりも、「この1年間でどれくらい伸びたか(成長速度)」の方がはるかに重要です。

なぜなら、成長速度の低下は、栄養不足、睡眠不足、あるいはホルモンの異常や何らかの疾患を示す最初のサインであることが多いからです。

年齢別の標準的な年間成長速度

以下の表は、年齢ごとの標準的な年間成長速度の目安です(2)。

年齢 男子 年間成長速度 (cm/年) 目安 女子 年間成長速度 (cm/年) 目安
4〜5歳 6.0〜7.0 6.0〜7.0
6〜7歳 5.5〜6.5 5.5〜6.5
8〜9歳 5.0〜6.0 5.0〜6.0
10〜11歳 5.0〜7.0(スパート開始) 6.0〜8.0(スパート期)
12〜13歳 7.0〜10.0(スパート期) 5.0〜7.0(スパート後半)
14〜15歳 5.0〜8.0(スパート後半) 1.0〜3.0(減速期)

※上記は目安であり、特に思春期は個人差が大きいです。

例えば、現在身長が平均より高くても、過去2年間の成長速度が年間3cm程度しかなかった場合、将来的には標準的な成長パターンから外れてしまう可能性があり、精査が推奨されます。

家庭での身長測定の重要性

成長速度を把握するためには、家庭で定期的かつ正確に身長を測定することが重要です。

  • 頻度: 少なくとも年2回(例:誕生日と、その半年後)。可能であれば3~4ヶ月ごとが理想です。
  • 時間帯: 身長は重力の影響で朝と夕方では1~2cm程度異なることがあります。必ず同じ時間帯(できれば朝起きてすぐ)に測定しましょう。

成長曲線の活用:「点」から「線」で評価する

過去から現在までの成長の経過を視覚的に把握するための最も重要なツールが「成長曲線」です。成長曲線は、「ある一時点での身長(点)」だけでなく、「成長の経過=成長速度線)」を評価することを可能にします。

母子手帳や学校健診の記録を用いて、ぜひ作成してください。

成長曲線の見方と評価ポイント

標準的な成長曲線には、あらかじめSDスコアに基づいた基準線(SDバンド)が描かれています。お子様の記録をプロットし、以下の点を確認します。

  • 現在の位置 : 現在の身長がどのSDラインの近くにあるか(-2.0 SD以上か以下か)。
  • 成長の軌跡(線): 最も重要なのは、お子様の成長の軌跡が、標準的なカーブに沿って伸びているかどうかです。

【順調なパターン】
たとえ身長が-1.5 SDと低めであっても、その子のペースでカーブに沿って安定して伸びていれば、多くの場合、病的な問題はなく、体質や家族性の低身長と考えられます。

注意すべきパターン:カーブからの逸脱

警戒すべきは、「標準的なカーブから逸脱する」パターンです。

  • 成長速度の鈍化(カーブが横ばい・下向きになる):
    例えば、これまで平均身長(0 SD)付近だった子が、ここ数年で成長速度が落ち、カーブを下方に逸脱していくケースです(例:0SD → -1.0SD → -1.8SD)。たとえ現在の身長がまだ-2.0 SDに達していなくても、成長速度の著しい低下は異常のサインである可能性あり、速やかな受診が推奨されます。
  • 急激すぎる成長(カーブが急上昇する):
    逆に、年齢不相応に早い段階で急激に身長が伸び始めた場合、「思春期早発症」の可能性があります。この場合、一時的に身長が高くなっても、骨の成熟が早まりすぎてしまい、結果的に最終的な成人身長が低くなってしまうことがあります。

成長の個人差をどう考えるか

身長は、遺伝的要因や体質(思春期の早晩)によっても大きく影響を受けます。

両親の身長から予測する(遺伝的要因)

両親の身長から、お子様の遺伝的な予測成人身長(目標身長:Target Height: TH)を算出することができます。

  • 男子の予測成人身長 = (父親の身長 + 母親の身長 + 13) ÷ 2
  • 女子の予測成人身長 = (父親の身長 + 母親の身長 - 13) ÷ 2

この計算値はあくまで目安であり、±8~10cm程度の幅があります。現在の身長が、この遺伝的な目標身長に向かって順調に伸びているかを評価する指標となります。

思春期の早晩(体質)と骨年齢

思春期スパートの開始時期には個人差があり、「早熟タイプ」と「晩熟タイプ(おくて)」では、成長パターンが大きく異なります。

  • 早熟タイプ: 周囲より早く身長が伸び始めますが、その分早く成長が止まります。
  • 晩熟タイプ: 成長スパートが遅いため、中学時代などは身長差が目立ちますが、高校生以降も伸び続け、最終的に平均的な身長に追いつくことが多いです。

現在の身長が同じでも、早熟タイプと晩熟タイプでは評価が全く異なります。これを客観的に評価するために、医療機関では「骨年齢(こつねんれい)」を測定します。手のレントゲン写真を撮り、骨の成熟度を評価することで、あとどれくらい伸びる余地が残されているかを推測することができます。

おわりに:客観的な記録と早めの相談を

お子様の身長について考えるとき、「平均値」はあくまで参考情報の一つに過ぎません。最も重要なのは、その子自身の過去からの成長の軌跡をたどり、順調なペースで成長しているかを確認することです。

まずは、ご家庭での身長記録をもとに、ぜひ「成長曲線」を作成してみてください。客観的なデータに基づき評価することで、漠然とした不安が解消されることも多いはずです。

もし、以下のような点が認められる場合は、自己判断せず、小児内分泌の専門医にご相談ください。

身長が-2.0 SDを下回っている。

成長曲線が標準カーブを横切るように低下(逸脱)している。

思春期前なのに、年間成長速度が4~5cm未満の状態が続いている。

両親から予測される目標身長と比べて著しく低い。

当院では、詳細な問診、骨年齢の評価、血液検査などに基づき、お子様の成長パターンを正確に評価し、栄養や生活習慣に関するアドバイスから、必要に応じた専門的な治療(自費診療による成長ホルモン治療を含む)まで、科学的根拠に基づいたサポートを提供いたします。お子様の健やかな成長のために、正しい知識を持って向き合っていきましょう。

【出典・参考文献】
(1) 文部科学省. 学校保健統計調査-令和4年度(確報値)の結果の概要.
(2) 日本小児内分泌学会編. 小児内分泌学 改訂第3版. 診断と治療社.
・日本小児内分泌学会.http://jspe.umin.jp/
・日本成長学会.https://auxology.jp/

RESERVE

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